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'zero' by xoltev (Wasabi Tapes) |
Wasabi Tapesのnew shitは鹿児島のプロデューサーxoltevのフルレングス。地方と東京の関係性に問題提起するほどのエネルギーは今の私には無いが、彼のような人物が沖縄を除く日本の南端にて静かに活動をしていることに、なんとも言えぬ哀愁のような感情を抱く。来日の催しで熱を帯びる様子をSNS越しに眺めている孤独が世界中にある。彼がそれを求めているのかは別として、これほどの美しい世界にどうか今以上の光が当たって欲しい。彼の音楽を多くの人に聴いて欲しい。彼がどんな気持ちで淡々と音源をYouTubeにアップロードしているのかを考えて欲しい。余計なお世話なのかもしれないけれど。
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彼は元々voltexという名義でボーカロイドとジュークを取り入れた楽曲を制作していたのだが、いつからかxoltevという名で活動を始め、そこにボーカロイドの姿はあまり見えなくなった。ボーカロイド・ユーザーというとOrange Milkからもデビューしたmus.hibaなどが浮かぶが、mus.hibaには人懐っこさがあり、万人を包むポップ・ミュージックの理がある。しかし、xoltevにはどうも実態の無さがつきまとう。大量のアカウント、プライベートの見えないツイッター、大量にアップロードされるYouTubeのチャンネル。いや、違う。Botの向こうにもそれを仕込んだ人間がいる。更に彼はBotではない。彼はそこにいる。彼が淡々と創っていく世界はThe Unfinished Swanのような端正さと静けさ、美しさを備えており、それらが描くどこまでも続く地平線のなんと遠いことか。誰かを呼んでも誰も応答しないかもしれない。しかし、この圧倒的な世界を創ることの出来る日本人がどれほどいるだろう。
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xoltevの音楽には澄んだ空気が漂う。似合う色はブルーやホワイト。バレリーナ、宮殿、城、ICO、海、モノレール、早朝、夕日。Wasabi Tapesが彼の作品をリリースできたことを光栄に思う。そして、2017年が彼の年になりますように。