冥丁は「日本の闇のムード」をコンセプトとしたプロジェクト。ヒップホップを根底に、怪談などの音声をサンプリング。ジメッとした湿度の高い日本の夏の夜。冥丁にはその雰囲気が全編に渡って漂っており、これほどコンセプチュアルで完成されたプロジェクトもなかなかないのではないだろうか。ローファイ・ミュージックからASMRフリークにも幅広くヒットする独特な解像度も面白い。2018年9月、コンテンポラリーな電子音楽を発信するシンガポールの新興レーベル〈Evening Chants〉よりカセット・アルバム「Kwaidan / 怪談」をリリース。次作はベルリンの〈Métron Records〉よりLP(!)「Komachi 小町」をリリース予定だ。Howie Leeなどの登場と成功によって”欧米”から”アジアという世界”を考える時期に差し掛かっている昨今。ならば日本はどうなるかと考えたとき、冥丁はそれらのクラブ・ミュージックとのアクセスはそこまでないかもしれないが、ひとつの、日本産フォークロアを消化したビート・ミュージックとしての回答として完成されている。日本ではない、異国の人間ほど彼の音は魅力的に映ることだろうし、その逆輸入のパターンもそろそろいい加減にして我々が率先して彼について騒ぐべきだと思う。
