12/10/2018

2018年12月2日・5日・6日

2018年12月2日
食品まつりさんをゲストに迎えてsim radioを放送した。相変わらずリアルタイムで聴いている人は少ないのだけれども、毎回のようにノゾムくんだったり、サクマさんが反応してくれて、有意義だなと安心できている。月に1度ぐらいのペースできちんと続けていきたい。内容について:食品まつりさんとラジオをするのは実は2度目で、1度目のときは私が個人で(いまはラルプリに配信環境の整理は任せている)同じようなコンセプトの放送をしていたときに出演していただいた。3年ぐらい前だったかもしれない。そして今回も相変わらず(?)にユニークな選曲と軽快なトークで、特に印象的だったのが小学生時代からの幼馴染である大崎さんという方についてのエピソードだった。彼の音源をすべて携帯に入れているだとか、彼がきちんとしたリリースに積極的でない故にどうしても世に出したいという熱い思いから食品まつりさんの自主レーベルの設立を計画していることだとか、これほど好きなのに大崎さんは食品まつりさんの音楽はさほど好きではないという漫画のような関係性がとにかく良かった。40歳も手前の彼らが数十年と続ける付き合い、その人間関係は何よりもかけがえのないものなので、そういった友人がいることが羨ましかった。

2018年12月5日
何日か前に品川の原美術館が2020年に閉館することを知った。原美術館は2017年に「INFRA インフラ」が開催された際に一度だけ足を運んだことがあった。品川駅から徒歩15分ほどぐらい。品川プリンスホテルを右手にゆるやかな坂道を登ったところを横断歩道を渡って住宅街を進めば原美術館だ。私営の小規模な美術館で、半回遊の印象的な道のある庭を抜けると、落ち着いた佇まいの白い建物がある。
*
思い入れはないが想い出はある。それまでずっとインターネットで知り合った人間関係の先に進まなかった私としては、2017年の「INFRA インフラ」は初めて”人間的”な時間だったので、そこに付随している原美術館についての一報は不思議と切なさを覚えた。そういえば気になっていたリー・キットの展示「僕らはもっと繊細だった。」が開催中だということを思い出し、開館の時間に合わせ、一人で足を運ぶことにした。
*
リー・キット。感銘を受けた。SNSで様子を伺った際に窓から差し込む日光のように思っていた光はプロジェクターで投影されたものだったり、実際に天然光だったり、その境界がとにかく柔らかく、不思議な空間だった。あいにく私が訪れたときは曇り空だったのだが、これが日差しの強い日ならばよりそれがシャドーとの対比を濃いものとして効果的だったかもしれない。ただ、とにかく光と影の表現がよかった。例えば私が鑑賞しているその前を別の誰かが申し訳なさそうに通ったとき、プロジェクターからの射光は遮られ人の形をした影が作品を覆う。じっとそれを眺めていると、その瞬間もまた作品に溶け込んだ一部のような気がしてくる。投影や展示されているものと現実のものの線引きが曖昧で、自分自身の存在軸が気持ち良く薄まっていく感覚があった。個人的に特に印象的だったのは階段をあがってすぐの部屋にある、朱色のワンピースを着た少女が映し出されたもの。そこに風が吹いてカーテンが揺れるような演出の映像で、あの瞬間は確実に現実には吹いていない風が私の後方から優しく吹いていた。
View this post on Instagram

2018年12月5日 リー・キット 「僕らはもっと繊細だった。」

kenji t.さん(@exilevevo)がシェアした投稿 -

*
1時間ぐらいかけて1周したがもう一度...といった具合にじっくりと鑑賞し、気づいたときには12時を過ぎており食事時になっていた。3時間ぐらい没入していた。併設されたカフェ・スペースでランチプレートを食しながら、この展示について思慮した。こういう表現をしたい、と想いつつ。
*
K/A/T/O MASSACRE vol.199のリハーサルのために幡ヶ谷へと向かう。土地勘がないこともあるが純粋に方向音痴なので順当にいまいち場所がわからず、Googleマップで表示された移動に要する時間の倍ぐらいかかってようやく会場のForestlimitに到着した。主催のカトーさん、CVNのサクマさん、0と永遠の零さんなどがいて、基本的にコミュニケーション能力が低いので明るいふりをして挨拶するも自分のポテンシャルの限界に気付きトーンダウンする。印象が悪いだろうけれど、そういうつもりではないので....。気心知れた人がいてほしいので演者ではないノゾムくんに早く現場入りするよう要請をかけた。リハーサル、といっても自分はCDJで音を流すだけなので、きちんとファイルが動作するかだけを確認させてもらい、開演を待った。
*
0と永遠が良かった。開演間もなく、浅い時間帯で客足もまだまだだったのだが、白い衣装を着た二人が交互にポエトリーを進めていくもので、途中でNHKスペシャルからのサンプリング?なのかはわからないけれど、それはアメーバについてのものだった。声が聞き取りづらい部分も多いにあったが、終始、繊細で、純粋に好みな表現だった。原稿をiPhoneの光で下から照らしており、そのローファイなライトアップも逆に決まっていた。
*
地下街の喫茶レストラン「栞」にてノゾムくんとメトロノリとで晩御飯を食べた。途中からリナチョ、ミキちゃんも合流し5人になった。押していた自分の出番が近づいたので再びForestlimitへ。テーマは「オリンピック」として音を流した。実際には納得できる内容ではなかったが、数年前からコツコツと作り続けている内容をかいつまんだものと、新曲をいくつか用意して、あとはサンプリングを重ねていくだけ。いい加減にライブ・セットらしいライブをしてみたいが当分は上手くいきそうにない。本当にどうしよう。
View this post on Instagram

ありゃした!

kenji t.さん(@exilevevo)がシェアした投稿 -

*
東京に来て大きな音で音楽を流すことができる、というのも勿論のこと嬉しいのだけれども、やはり、私はいろいろな人と会えるのが好きなんだと思う。久しぶりに会う人もいれば初めて言葉を交わす人もいて、それぞれ踏み込んだ会話はできないぐらいに少しずつでしか目を合わせていないのだけれども、それだけで満足だった。初めてLSTNGT、pootee、cotto center、takaoka、オートモアイ、s-lee、cemetery、keita sekihara、bleed boi(敬称略)などと話した。純粋に時間が足りなかった...。諸々が落ち着いたあとに屋上でチルアウトした。非常にタバコが美味しい。最後まで滞在したかったが風邪で体力的に限界を迎えていたのと終電もあり、宿のリナチョのスタジオ「たまごハウス」へ。のぞむくんと近況などについて話した後、眠りについた。
*
イベントについて。通算200回、毎週水曜日に開催。とてつもない胆力だなと感心する。このイベントは間違いなく現行の日本の音楽、ユース・カルチャー、アンダーグラウンド、先鋭の核心的存在だと思います。一定の美意識や哲学を匂わせながら、内輪的でも閉鎖的でもなく、その輪はより太く、大きくなっており、日本中の、大衆的な音楽でないところにも確実にある熱やエネルギーを権威的にならずに集約している様が、とにかく圧巻としか言いようがない。それが実現するのはForestlimitという箱の懐の深さ、ナパーム片岡・加藤両氏の人徳が為すところなのだと。そういったカルチャーの中心地に呼んでいただき、光栄でした。今度はひとりの客としても足を運んでみたい。

2018年12月5日
午後に新宿駅の中央東口で待ち合わせ。のぞむくん、cotto center、自分の3人で喫茶店で会話をした。cotto centerは初めて電話したときに異常に声が小さく(機械の不良的な意味)、勝手に暗い印象を持っていたら明朗なキャラクターだったので良い意味で裏切られた。世間話や活動についてなど話し、cotto centerと別れ、羽田空港へ。のぞむくんが空港まで送ってくれた。飛行機ではクヌート・ハムスンの「ヴィクトリア」を読み進めた。窓からは黒く染まった雲海が広がっていた。