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Detroit Become Human |
『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』やエレン・ペイジを主役に起用し話題を集めた『BEYOND: Two Souls』の開発で知られるスタジオ〈Quantic Dream〉が開発中のソフト『Detroit Become Human』の最新トレイラーをE3 2016にて公開した。
『Detroit Become Human』は人と外見や知能が変わらないアンドロイドが製造されるようになった近未来が舞台のタイトルだ。アンドロイドに仕事を奪われた者がデモを起こし、本来人に奉仕するはずのアンドロイドが何らかの理由で変異し、人に害を及ぼし始めた世界は美麗なレンダリングも相まって現実感を伴っており、説得力がある。
今回のトレイラーでは、人質を取り屋上に立てこもるアンドロイド"ダニエル"と交渉するアンドロイド"コナー"に焦点が当てられている。トレイラーでは詳細は描かれてはいないが、制作元が語るところによると事件を解決にやってきたコナーは他の警官や特殊部隊の人間からアンドロイドということで疎まれており、全く協力を得ることができない。そのため、自分自身で事件を解決することになるのだが、事件の手がかりを探す中で元々ダニエルはその家庭に不在だった父親の代わりとして「子守役」を任されていたが、シングルマザーだった母親が恋人を見つけたことに伴って「子守役」が不要になったため別の家事役アンドロイドに置き換えられ、自身は廃棄(=殺処分)される運命にあったということが分かっていく。「仕事を奪った」と人から疎まれる一方、自身の権利に関しては声高に叫ぶことのできないアンドロイドの二重性は人工知能を生み出した人間の傲慢さを指摘しているとともに人間の主体性への問いを投げかけている。
それは「これはわたしたちの物語」という宣言からも透けて見える。このゲームの世界でアンドロイドが抱える問題は今の我々が抱える問題でもあるのだ。例えば、2015年にパリで公開されたトレイラーでは同じ顔をしたアンドロイドが使い捨てタイプとして登場しているが、アンドロイドが不在の現在ですら主体性が剥奪され、人間が使い捨てられる事態は起きている。
また、James Ferraroの『Human Story 3』やMichael GreenとJónó Mí Lóが共同で制作した映像作品『C V B 3 R W A R II. PROJECT DARPA』のように、昨今人工知能をモチーフにした芸術作品が注目されるようになっているが、これらが問いかけるのも人工知能の登場による我々人間の主体性の揺らぎである(『C V B 3 R W A R II. PROJECT DARPA』では人工知能が自らの判断でテロリストや人質の区別なく目標を殺害しており、そこに人間側の意思の介在は無いように見える)。
〈Quantic Dream〉が制作ということもあり、『Detroit Become Human』が与えられた選択肢の中から自分が正しいと思うものを選び、物語を進めるインタラクティブなゲームであるということもまた重要だ。人間が人工知能側として選択をしていくということは人工知能への想像力を働かせるということであり、人間と人工知能の間に横たわる問題を一面的ではなく、多面的に考えさせる余地を与えている。
拙ブログでも記したが、果たして人工知能が本当に人間を超えるのか、それは分からない。だが、人工知能を問いかけることはそのまま人間自体を問いかけることに繋がっている。
○ Quantic Dream http://www.quanticdream.com/