数万人を収容するアメリカン・フットボール・スタジアムが沈んでいく霧の海を遊泳するCheseball _は、ゆったりとした動きから非常に潜水の時間を長くとり、この手のジャンルの様式美を見事に抑え、深淵なる白の世界を創り出している。現実と夢幻の間に敷かれた境界線が蜃気楼のように揺らいで溶けていき、全身を冷んやりとした空気が包むと、水蒸気と電子の粒が螺旋を描きながら波を打つのが遠くにも近くにも見える。海なのか、雲なのか。それとも電脳の世界なのか。
Cheseball _の事は以前から彼・彼女のチャンネルに登録していることもありゆったりと追っていたが(私の楽曲も扱ってくれている)、彼・彼女の審美眼によって淡々とアップロードされていく他者の音楽と自身の対比のさせ方が抜群に良く、これを一向にまとめて作品としてパッケージする気配の無いのもYouTubeにてのみ観測できる表現で非常に愛しくなる。世界の数十人程度が観客であることを腐ったアンダーグラウンドと切り捨てるのか、特別なものとするのか、私はやはり後者でありたい。
○ Cheseball _ https://www.youtube.com/channel/UCRPHs5GXk_e4rBgq3pWHAeg