2/26/2017
SIMS: LSTNGT
LSTNGT。疾走、という言葉がこれだけ似合うアーティストも少ないだろう。青く冷静な筆致で描かれた彼の音には聴いた人間を一歩前に向かわせる激情がある。西川尚宏率いるレーベル、〈Solitude Solutions〉から初のレコード作品「Boarding Gate」を発表した彼の実態に迫るべく、インタビューを試みた。
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---これまでの生い立ちや学生時代について教えてください。
高校生まではほんとにクソ真面目な性格でした。予習復習とか毎日家でやってましたし。でもそれは塾に行ってるやつらをバカにするためだったんですよ。まあただの天の邪鬼です。とにかく皆とは違う人間になりたかったのだと思います。大学生になり、大学の映画制作サークルで出会っためちゃくちゃな先輩方のおかげで大分不真面目になりましたね笑。もちろん良い意味ですよ。そして前職の映像制作の会社の音響部門に就職しました。そこで出会っためちゃくちゃキツイ上司に鍛えられて……。当時はどうにかしたろうかと思ってましたけど笑、あの人と業界のクソみたいな労働環境のおかげで今の自分がありますね。感謝してます。
---音楽を作りはじめたきっかけを教えてください。
独りでもできる環境ができたからだと思います。小さい時から図画工作と絵を描くのが好きだったので、DTM環境が揃った時にそれと似た感覚を得たのがきっかけかもしれません。
---前職で映像関係の仕事をされていたとのことですが、制作している音に関して映像からの影響というものはありますか。
あります。というか映画を観るのが好きなので、日々影響されてますね。
---今まで見た映画の中のベストを是非。
良い作品はたくさんありますし、2016年はジャ・ジャンクー監督の『山河ノスタルジア』がとてもよかったです。去年の大阪でのFalusのトーク用のプロフィールとして僕が送ったんですが、使われなかったオールタイムベストをあげておきます。あくまで日々更新されますけど、大学時代くらいまでの自分を構成する要因になってると思います。(順不同)
『水の中の八月』石井聰互監督
『あの夏、いちばん静かな海。』北野武監督
『トロピカル・マラディ』アピチャッポン・ウィーラセタクン監督
『リリア 4-ever』ルーカス・ムーディソン監督
『鉄塔武蔵野線』長尾直樹監督
『ボーイ・ミーツ・ガール』レオス・カラックス監督
『戦場のメリークリスマス』 大島渚監督
『紀子の食卓』園子温監督
『冷たい水』オリヴィエ・アサイヤス監督
『ロケーション』森崎東監督
---JGバラードなどを文学のフェイバリットに挙げられていますが、文学から着想を得ることも大事にされていますよね。
文学も映画も音楽も同列というか形態が異なるだけでインスピレーションを得る点では変わりません。気になる音楽を探すのと同じ感覚で小説も探しますし。
唯一自分の良いところがあるとすれば興味があるものがとても多いことですかね。まだまだ自分が知らない世界がたくさんあって、それを知りたい。
---では、音楽に関して。これまで発表された作品に関して、一貫してトランシーな質感で音を作られていると思いますが、影響を受けた音楽を挙げてください。
---LSTNGTの曲には何かを掴もうとしている意志があると個人的には思っているのですが。
具体的に何かというのはありません。ただ、音楽にしろ映像にしろアイデアが思い付いた時に頭に思い浮かぶ桃源郷のような風景・感覚がずっとあって、そこに辿り着きたいという気持ちがドライブ感を加速させてると思います。
---LSTNGTの哲学や美学を教えてください。
哲学とか美学ってほどじゃないですけど、やっぱ、クソみたいな現実から脱出したいってのはあると思います。クソな状況を作り出したのも自分なので、自分で変えようと思って。
---〈Solitude Solutions〉はLSTNGTにとって大切なレーベルだと思います。レーベルとの出会いと新作LP「Boarding Gate」リリースの経緯について教えて下さい。
元を辿れば全て佐久間さん(CVN)なのですが、西川さんがレーベルを立ち上げる前にTHE INVENTION OF SOLITUDEというイベントをやってまして。その2回目にCOLD NAMEとの共演で呼んでもらったていうのがLSTNGTの初ライブです。それが出会いというか全ての始まりですね。なので自分の基盤を作ってくれたレーベルなのでそこからLPを出すというのは自然な流れだったかもしれないです。
---「Boarding Gate」のライナーでレーベルのオーナーである西川さんが「イノセントな少女」というワードを使い作品を表現していましたね。
今回のライナーは僕がLSTNGTとして最初に作った『リリア4-ever』を使ったビデオから着想を得たものだと思いますので、その映画の主人公がイノセントな少女なのかなと思います。制作中の感覚というか曲を作るきっかけの一つには破壊衝動がありますけど。
---製作中はどういったことを考えていましたか。
雲が動いている赤紫色の空ですね。最近のライブやCelestial Windのビデオイメージにも使ってますが、この空のことを考えてました。去年泥酔した時に夕暮れの新宿、靖国通りをブレーキの効かない車で爆走してた夢を何度も見たんです。その時の空がこんな感じで。もう終わるな、死ぬなっていう。だから、ジャケットの写真も新宿のビルです。実際に友人と一緒に撮影に行ったんですが、間違いなく2016年の新宿と雲です。
---「Boarding Gate」に影響を与えた作品があれば教えてください。
今敏『パーフェクトブルー』(1998)
---ご自身でデザインをしたコーチジャケットやスウェットを販売されていますよね。これらのきっかけは何だったのでしょうか。
EyedressのEveryhitng We Touch Turns Into Goldて曲があって、そのビデオで彼が着てるコーチジャケットが欲しかったんです。どうにか調べたんですけど、どうにも買えないやつだったので自分で似たデザインのを作りました。それがModerate Nightmare 84-97コーチジャケットです。その元のコーチジャケットのデザインとの類似性から連想したシスターズ・オブ・マーシーのサムガールズのジャケを掛け合わせた感じです。まぁ、まんまシスターズやんて言われますけど、僕の方が解体新書寄りです。
---部数限定のカセットもご自身で作られていると思います。DIYについてどう考えていますか。
できることなら全て自分のイメージ通りのものを創りたいと思っている人間なので、DIYはその人のダイレクトな、感覚を共有できる一番良い方法だと思います。何よりも誰にも邪魔されないですし。
---クラブには足を運びますか。
そんなにクラブにたくさん行く人間ではないです。それこそ、色んなとこで言ってますけどPictureplaneの来日の時に行った渋谷のSECOバーに行くまで小箱のクラブなんてほとんど行ったことなかったです。学生の時は映画漬けだったんで、クラブよりもオールナイト上映の方が多かったですね笑 ただ、クラブイベントで音楽を聴かないとわからないことがたくさんありますし、起こります。おうちの中で安全にぬくぬく生きていても何も生まれないと思います。なので週末の夜に出かける行動自体にとても魅力を感じるというか。去年日本でも公開されてた『ヴィクトリア』っていう映画はそれこそある若者たちの一晩をワンカットで撮った映画なんですけど、そのクラブシーンと事件に巻き込まれていく感じがすごく良くて。あの夜から朝に繋がる感覚。そのパーソナルな感覚を人と共有し続けるってのは重要かもしれないです。
---昨年大阪に来てくださった際のライブについてですが、LSTNGTの音が観客を高揚させ、演者と観客が正面からぶつかり合う、非常にピュアで美しいライブでした。そこでお聞きしますが、LSTNGTにとってライブとは何ですか。
ライブは毎回最後だと思ってやってます。ただ、ライブに来てくれる人には楽しんでもらいたいという気持ちは強いです。独りよがりには絶対にしたくない。だから映像とかもできる限り使いたいって思いますね。即興性のあるライブスタイルではないので、1つの作品としてライブを提示できたらなとは思います。
今日、ある人と映画を観ることについて話してて。その人は好きな映画を何度も繰り返し観るみたいなんですが、私はとにかく色んな映画をたくさん観たくて。たくさんの映画を観る理由は「色んな映像が同時に脳内を駆け巡って行く中で繋がった時に世界と対話している気になるから。」って伝えたら「その対話って友達がいた感覚になるね。似た感覚の」って言ってて、それ本当に良い言葉っていうか。そういう感覚を探しているのかもしれないなーって思いました。何が言いたいかというと、観てくれた人が、また新しい解釈をして想像して欲しいんですよね。面白いところを見つけて欲しい。そこでまた新しい世界と繋がれる気がするから。
---現在の東京のシーンについてどう考えていますか。
とても難しいです。今自分が行きたいイベントがめちゃくちゃ増えてるというのは何かが起こってる証拠ではあると思うんですが、シーンはわからないです。そもそもLSTNGTはジャンル音楽やクラブミュージックとしても失格で何かに属せる感じが何も無い。だからシーンに加担できるとは到底思えないです。ただ、音楽が好きな人、お客さんはシーンを作れますよね。後からその人が語ればシーンの当事者になれますもんね。
---自身のブログで「自分の中の東京」の景色について書かれていましたね。改めて、「東京」とは自分の中でどういったものなのかを教えてください。
後から見返すと恥ずかしい文章ですね。酔っぱらって書いてますねこれ。あはは。
---これからの展望について。
今興味がある物事をその都度形にしていければいいなと思います。
あとは、屋外とかでライブしてみたいですね。
---最後にこの記事を見てくださった方にメッセージをお願いします。
Solitude SolutionsのオーナーのZINEのタイトル「Fire And Motion」ですね。
この言葉に尽きると思います。
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111X ~ WOULDN'T WANT TO DO IT / INNER PEACE
〈TAR〉や〈AMEN〉など新進気鋭のレーベルから熱い視線を浴びる111Xはある意味VLOG的な、即興ともいえる動画作成の芸術性に機敏に反応していた作家の一人だと言えるだろう。彼のサイトで見られるアシンメトリーで、空白を生かした意匠の妙は動画作成においても存分に生かされている。
Robin Vehrs ~ Trampolin Fail Compilation / How to stabilize a video on Youtube, 2016
ドイツ・カッセル在住のイラストレーター、Robin Vehrsによる映像作品。空虚で、そしてスカム……だが、笑える。肝心のトランポリンを失敗する映像が見事に見切れまくる「Trampolin Fail Compilation」。自身のセルフィとゲーム映像を重ね、ゲームオーバー時の絶妙な表情を捉えた「letsplay elasto mania fail」。手ぶれしまくる映像と謎のビープ音と共に三脚がせり出してくる「How to stabilize a video on Youtube, 2016」(もはやタイトルで出オチしている)。これらの動画に共通して含まれるシュールさが彼にとっては重要なテーマなのだろう。
$ega & the rainbow streets '想いで100景' (Teaser) via Noumenal Loom
豪勢な音楽をバンドとして作りたいという気持ちが強くなり、DJWWWWのスタイルにはしばらくは距離を置くとして、そこで私が目指すのは、中学を卒業する頃にピッチフォークで出会った、青春とも言えるThe Avalanchesだった。サンプリング・ミュージックの美しさを知ったあの頃と、カール・ストーンやジョン・オズワルド、OPNなどを経ての現在を、$ega & the rainbow streetsとして柔和に織り交ぜていきたい。
POSTED BY
Kenji T.
2/18/2017
SIM RADIO #5 FEB 19 10PM JST /w Nozomu Matsumoto, Kenji Yamamoto, La Reprise
Malibu - Being There
111X - WOULDN’T WANT TO DO IT
Julius Smack - I Will Not Steep My Speech
Deacon Chris Anthony - Webcam Man
Mutsuo Takahashi - A Study of Glass
Green Music - Rainforest Synthesis
Mattea Landry, Sean Mccann, & Eric Schmid - Content, Iteration II
$ega & the rainbow streets - 江ノ島, 夕景
Yoshitaka Hikawa & Isamu Yorichika & Nozomu Matsumoto & Kenji Yamamoto - Untitled
frère tuck - laundry man
2/13/2017
'PF$$$$$$$$$$$$$$$$$' by PF (Wasabi Tapes)
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'PF$$$$$$$$$$$$$$$$$' by PF (Wasabi Tapes) |
Wasabi TapesよりPFの1stアルバム『PF$$$$$$$$$$$$$$$$$』をリリースした。もっと作り込める余地はあったのだが(実際、この作品は個人的に満足出来ていない)、夏にかけて大型の現場に補助員として入ることが決まり、仕事が忙しくなることが確定したので、そうなる前に一度形にしておこうと思い。その現場を乗り切れば多少は落ち着くとは考えているが、どうなるかは分からないので。
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私がDJWWWWとして単一化されるのが嫌でたまらず、フェルナンド・ペソアになりたい私は自我を分散させたいし、しかし、確実にそれらの集合体が私でありたいので、2017年以降はDJWWWWからはなるべく距離を置く。PFがどうなっていくのかは分からないが、今年で死んだとしてもそれはそれでアリだなと、やはり、私は地下で自慰行為を続けていきたい。それでいい。自分がやりたいことをしたい。
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本作のCDについて大阪にて手売りする予定。価格は1000円ぐらい。
2/05/2017
SUNSET DIVER ~ Thicket
ナイスショップスーのレーベルVery Goisが処女作として水中の女性を撮影した動画から音声を引き抜いて陳列した作品を『underwater_relax_videos』として発表していたが、そのフェティシズムをPatient Soundsの新作、Sunset Diverによる「Thicket」にも感じる。『underwater_relax_videos』はYouTubeにて集音されたフィールド・レコーディングであるのに対し、「Thicket」は美しいピアノの旋律と共に進行していく、埃を被ったローファイ・ビートの佳作。”水の音が持つリラクゼーション効果”という共通した視点は特別に新しいものではないが、そういった癒しを私たちは求めているのかもしれない。
LoveSu Bunny ~ Axis Mundi / FGJ17
『Islands』、『Perception』、『The Unfinished Swan』が交わったような世界を歩く短い映像『Axis Mundi』がLoveSu Bunnyのアカウントにアップロードされている。FGJ Lahti | Global Game Jam®に出品されたものだ。製作環境はUE4。VRゲームとして発表されるとのこと。
James Johnson ~ Kuu-50 - something always nothing/ Alexandra Estate: lower floor
陽が沈んでいき朱を背景に街のシルエットが浮かび上がってくる、あの瞬間が永遠に続いてくれればいいのに。
**** dj corpmane - tell me im the only (winter edits 16/17) **** COMING SOON
Elysia Crampton・Chino Amobi以降のレイヤーの重ね方はコラージュの新しい時代の到来を告げ、それはTotal Freedomが切り開いたクラブ・ミュージックへと交わっていく。それが2014〜2016年の最大のエネルギーだったわけだが、幾分かそれらへの興味が以前ほど湧かなくなっていた。しかし、この映像を見るとやはり、しっかりとした時代の音であると再認識する。10年後に振り返ったときに、そこにあるものとしての強度がある。
Ruiner is coming to PAX South. Prepare. Destroy.
Ruiner is coming to PAX South. Prepare. Destroy. https://t.co/wCTcDi09z2 pic.twitter.com/Wc0WnIMr1d— RUINER (@ruinergame) 2017年1月20日
2/01/2017
Marvin Antonio ~ antibodies / CITY
ロシアはサンクトペテルブルク生まれ、現在はトロントにて活動する作家・Marvin Luvualu Antonioが短編の映像作品を複数、投下している。「antibodies」は顕微鏡のなかの世界を額縁に、GTA的なオープン・ワールドを行くヴィデオ・ゲームのドライブと、現実世界のドラレコを並列にならべ、途中でアニマルが中央に。採取した映像による路上を舞台としたミュージック・コンクレートに無機質な男性のナレーションがコラージュされ、最終的には動物の唸り声が重なってくる。背景にはスクリューされたビートが鳴っているし、『Replica』のような禍々しさを持っている。雲と排煙に霞み、夕日に燃える都市を詠う「CITY」はラストの、低音にねじ曲げられたポエトリーがあまりにもショッキング。でもどこか切ない。巨大な都市に集う人々のなかにある孤独を見つめるような。名前は出さないが、以前、とある女の子が「天気がいい日は自分だけが家にいるのかと落ち込むから嫌い」と呟いていて、それに覚えた感覚が少し近いかもしれない。
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