3/20/2017

'RPO (Ritual Public Offering)' by NIKKEI (Wasabi Tapes)

'RPO (Ritual Public Offering)' by NIKKEI (Wasabi Tapes)

Wasabi Tapesのnew shitはGordon WantuchによるプロジェクトNIKKEIのデビュー作。経済にまつわるチャートを目にしたとき、それらの背景には末端である私達の日々の生活があるわけだが、どこか自分とは無関係であるように、他人事であるように思える瞬間がある。あまりにも巨大な上層の意向で操作され動いていく折れ線は一般市民の私にどうすることも出来ないし、円安・円高の話もバンドキャンプなどで音源を購入するときに思い浮かべるが、だからと言って、というのが事実だ。NIKKEIはそれら上・下部構造の社会が無機質に刻字していく点と線、数字が織りなすものを眺めているときに流れてくるアンビエンスを捉えている。音の質は温もりのあるものなのに、それを描写するNIKKEIの目はどこまでも冷めているし、資本主義の限界に直面しつつある現代という世界が崩壊していく(かもしれない)未来の姿を目の当たりにしているような感覚を覚える。しかし、こう大袈裟にディストピアを記しながらも本作『RPO』の心地がよいのは、あくまでもNIKKEIは「経済」のアンビエンスを写実的に奏でているだけで、そのチャートの向こう側を触れようとはしない、”エモーショナル”の引き際に抜群の感性が働いているのだと感心している。NIKKEIの第一歩に立ち会えたことを感謝したい。