10/19/2016

SIM MIX: #005 食品まつり a.k.a foodman ~ '釣心会例会MIX'


私はポップミュージックがその後ろにある音楽が好きだ。敬愛するOPN、James Ferraro、Gobby、Giant Clawたちの後ろには底知れぬポップミュージックのエネルギーがある。愛情や批評、どんな形でもいい。彼らのように、この世で最も求心力のある”ポップミュージック”なるものを作家のフィルターを通し、世間一般的には醜悪な形で吐き出したものこそが時代の先端で輝く美の結晶である。ポップミュージックはタフだ。向き合うのは根気が必要である。しかし、その姿勢は後世から見た時に必ずや尊敬の念で迎え入れられる(彼らは現在もしっかりと絶大な支持を受けているわけだが)。私がジョン・オズワルドやカール・ストーンの作品群に衝撃を受けたように。
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Foodmanを何かにカテゴライズしようと試みると、そこには彼が人生の歩みの中で耳を傾けてきたであろう、ポップミュージックのフィールドが遠い地平線を描いており、その広大さに対し途方に暮れる。”これは何なんだろう?”。Foodmanが作り出す音は軽妙であり奇天烈だが、耳を塞ぎたくなるようなトラッシュではない。あらゆるジャンルを咀嚼した”Xジャンル”が”ダンスミュージック”として、”ポップミュージック”として機能し世界中の人々の心に届くのは何故なのか?

その答えは彼に「得体の知れなさ」が無いからだろう。彼はバンドマンでありクラバーである。それらと相容れないはずだったインターネット・ミームも等しく愛す、徳の深い人物だ。RAのライターとそのライターが絶対にRAでは取り上げないであろうVektroidの両者からラヴ・コールを受け取るのは至難の技だが、Foodmanはナチュラルにそれを実現している。何の嫌味もなく、何のポーズもせず、彼は自然体で日々を過ごし、日々を音楽にする。彼は口数も多い。くだらないジョークも口にする。秘匿性を盾にすることで得るクールネスに頼っていない。よく喋り、よく作る。そんな人となりは奇怪で歪な音の輪郭に丸みを帯びさせる。彼が多くの音楽やその文化を愛しているように、彼の音楽は誰からも愛される優しさを持ち合わせているのだ。

愛情でも批評でもいい。私は”ポップミュージック”と向き合っている実験の音楽が好きだ。いま日本の先頭を走るFoodmanがそんな人物で良かったと心から思う。彼から広がる波は現行と未来の”ジャパニーズ・エクスペリメンタル”をより活性化させるだろう。個人的に”ノイズの国”としての”ジャパニーズ・エクスペリメンタル”はいい加減に更新したい。あの世代は偉大だ。高い壁だ。しかし、いつまでもそれでいては面白みに欠ける。OPNやJames Ferraro、GobbyやGiant Clawのような音楽が日本から出てこなければならない。私自身の活動の目標もそこにある。こんな私見を織り交ぜて彼を巻き込み、彼の肩に重荷を載せるつもりはない。しかし、私にとって彼はいまの日本で最も輝いて映るのだから仕方がない。純粋に大ファンなのだ。
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今回Foodmanが我々に提供してくれたSIM MIXは、彼の原点とも言えるバンド「釣心会」の音源をまとめた貴重なものだ。現在、欧州ツアーを敢行し、ますます太くなっているFoodmanの過去を覗こう。



Tracklist:
  1. デストロイ - 釣心会
  2. ジェームスディーン- 釣心会
  3. ヅラ- 釣心会
  4. 森のくまさん- 釣心会
  5. 月明かりと猫- 釣心会
  6. プロペラ- 釣心会
  7. マウンテン- 釣心会
  8. ボーイングラブ- 釣心会
  9. ヒラヒラ- 釣心会
  10. ハイナレッドのテーマ- 釣心会
  11. オレンジジュースCM- 釣心会
  12. タンポポ- 釣心会
  13. アラポテト- 釣心会
  14. シナプス- 釣心会
○ 食品まつり a.k.a foodman https://soundcloud.com/shokuhin-maturi