7/31/2016

SIM MIX: #002 Julius Smack ~ 'Summer Galliard'

Julius Smack

 Julius SmackことPeter Hernandezはロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト。私が彼のことを知ったのは今年の春前のことだった。彼が主宰を務めるカセット・レーベル〈Practical〉は自身の作品をリリースする傍ら、Anna Luisa Petriskoによる科学と魔法の風景をナビゲートするプロジェクトJeepneysが2014年に発表した実験オペラ&映像インスタレーション『OLINGLINGO』のスコアや、SSWかつマルチメディア・アーティストである才女Wizard Apprentice、〈PAM residencies〉のディレクションを務めるキュレーターBrian Getnick、Jennie Liuによるパフォーマンス/ヴィデオ・プロジェクトGrand Lady Dance Houseなどの作品をリリースしている。肩書きの区分としての”ミュージシャン”に括られる人材ではないところ、それら米国アート界の現行を”バンドキャンプのカセット・レーベル”でパッケージしているのは異質に映る。私はここのカセットを全て購入したが、届いたそれらはラメで煌めく非常に丁寧な装丁の美しいものだった。
 Julius Smackも”ミュージシャン”ではない。彼は確かに電子音楽やゴスペルを嗜むが、Colin Selfにも通じるようなバレエ・ダンス、ヴォーグを飲み込んだ身体表現のスペシャリストである。そしてレーベル・オーナーだ。やはり彼は生粋の”アーティスト”なのだ。このマルチ性がとにかく美しい。
 さて、今回のSIM MIXを彼に提供していただくに当たって、彼からミックスについての文章が届いたのでここに記載する。本人の希望で原文ママ。
Here’s my mix. I’ve been working through thoughts about “buried technology”—small devices that we lose in the sand and what computers and smartphones will mean to excavators thousands of years from now. Will our skyscrapers and data warehouses be ruined by a future ISIS? What will happen to all the plastic? It’s reflected in this recording of Filippo Grandi I made while driving home from a party. He is UN High Commissioner for Refugees, and News Day asks if he ever feels “disheartened” or “powerless”. “Of course this happens,” he says. He talks about being in Kenya, visiting refugee athletes who will go to the Olympics. “These are the things that make me a little more optimistic and help me keep going." - Julius Smack
ミックスに収録されるのはJulius Smack自身の楽曲の他に、『うたかたの日々』の再発で”知る人ぞ知る東の国の音楽”から”世界の宝石”になったMariah等。セルゲイ・パラジャーノフ作品のような鮮明な色使いで深く美しい彼の目に映る風景を描写していく。どの音楽メディアを読んでも追うことは出来ない際立ったセレクションで見事にまとめあげている。



Tracklist:
  • 00:00 - 01:45 Igor Stravinsky - Gagliarda
  • 01:15 - 02:03 Filippo Grandi, UN High Commissioner for Refugees, on News Day
  • 01:52 - 04:43 Julius Smack - Red Wine
  • 04:45 - 07:49 Mariah - Shisen
  • 07:52 - 08:36 Brigitte Fontaine - Moi Aussi
  • 08:36 - 10:45 Julius Smack - Buried Technology feat. Wizard Apprentice
  • 10:40 - 13:35 Can Am Des Puig - The Song of the Void
  • 13:35 - 16:20 Julius Smack & Michael Vidal - Red Rider
  • 16:20 - 19:35 Mega Bog - 192014
  • 19:30 - 21:19 Gino Soccio - So Lonely
  • 21:25 - 25:33 Wizard Apprentice - Keep It In, Keep It Out
  • 25:33 - 27:15 Julius Smack - Encrypted Lie
○ Julius Smack http://www.juliussmack.com

7/30/2016

UN' (p31k36p, Iku, ⭐︎7571)

UN'

 南ロンドンの〈Bala Club〉クルーの周辺が日本のメディアで取り上げられることも珍しくなくなり、Kamixloに至っては〈PAN〉効果が手伝って来日まで果たした。彼らが”太いところ”になった今、天邪鬼な私としてはその余波を受けたdj lostboiであったり、この〈UN'〉クルーがちょうど良い。メンバーはオーストリアのp31k36p、ドイツはフランクフルトのIku、イタリアの⭐︎7571の3人。先の〈Bala Club〉の他、〈NON〉、〈Halcyon Veil〉周辺のシーンに近いサウンドと佇まい。コミカルやキュートネスからは徹底的に距離を置き、シリアスに冷徹に。Chino AmobiとElysia Cramptonが作った感性の継承。新しい時代のレイヤーの重ね方を実行するコラージュ。〈Novembre〉辺りが放って置きそうにないファッショナブルな容姿。Elysia Crampton登場以降のコラージュで『Garden of Delete』も並行して好むAirportのような露悪趣味も存在すれば、〈UN'〉はまさに現場主義、クラブに広がる匂いがする印象だし、この分岐がElysia Cramptonのコラージュの面白いところだと思う。あれは確かにどちらにも響くのだ。



7/24/2016

White Goblin ~ 🎲 U0001f3b2 (Seventh Realm) / U+270C ✌ / Ego Rains




 Asternm Nexuの変名...いや、どちらがメイン?White Goblinが建築する地下迷宮は誰にも発見されずに孤独に佇んでいる。映画やゲームで描写される中世の民族音楽からインスピレーションを受けた”ダンジョン・シンセ”というファンタジーの色の強いタームがあったが、White Goblinにもその趣味は一部に見ることが出来る。そこに食品まつり的な解されたビートが反響していけば独特な奥行きを演出されていく。「🎲 U0001f3b2 (Seventh Realm)」は間違いなく今年上半期のベスト・トラックの一つだ。〈Awesome Tapes from Africa〉が発掘してきたような「U+270C ✌」もエッヂが効いている。そしてYouTubeでしか公開していないアルバム『Ego Rains』はノイズ趣味が爆発した内容だ。古代と未来をシームレスに紡ぎ、土着的鼓動を無機質に処理する彼は近々、某レーベルよりデビューをするとのことだ。私もお世話になった、あの。こうして繋がっていく関係性はとにかく面白い。 
 さて、Susan Balmar等の名義でも知られる/f周辺の人材の相関図を正確に描くことが出来る日本人はいないと断言できる。私もその中の一人ではあるのだが(私は彼らが運営するプライベート・ブログのメンバーなのだ)、”この辺”は誰が誰なのか本気でワケがわからない。しかし、覆面でパフォーミングをする東京のエママウスが相当に交流を深めているのを見るに(エママウスは”この辺”が参加する〈psalmus diuersae〉からデビューしている)、彼女ならばその難儀な行為も達成が可能かもしれない。

7/23/2016

eee ~ w:speak / darkness / dreams / machine / terms






 先日掲載したrrr Gと共振するのがeeeだ。数十年後のアート誌にてYouTubeの登場は確実に感性の変革として、タームとして論じられるだろうが、その分かりやすいサンプルをeeeというふざけたアカウントはあまりにも静かに地下に展開してくれている。”インターネット的”とするアートが3Dモデルの滑らかな質感に終始していないだろうか。形骸化してしまった故に早くも人々はそれらを過去にしようと画策している。個人的に”インターネット的”とはクラウドやSNSに依存した無価値の映像群をフリックした時に滑らかにスクロールされ流れていく様が最も近い。eeeが自身のアカウントに並べるのもrrr Gと同じく無価値の映像だ。適当に拾ってきた映像。適当に撮影してきた映像。非日常のエンターテイメントは皆無であり、誰にでも生産出来るゴミ。それをiMovieか何かで編集すれば出来上がりだ。さすがにiMovieは安すぎるか。Dean BluntとJames Ferraroの登場があったからこそ成り立つアート。しかし、rrr Gの時と同じ言葉を繰り返すがなんとも言えない心地良さがあるのがイマであり、YouTubeという額縁が想像以上に、アートに対し無意識に効果的に機能していることがわかる。D/P/IもYouTubeがあったからこそより一層輝いたのは正直に認めなければならないだろう。

7/19/2016

gobby + toiret status + djwwww ~ doflamingo - 4_30_16, 7.50 PM


 〈UNO〉の看板ミュージシャンとしてその奇怪なレーベル・カラーを鮮やかに彩り(いや、下水道のような汚れにまみれた”反グッド・ミュージック”なんだけども)、テクノやヒップホップなどのリズムとビートを咀嚼した何者でもない何かを作り出すGobbyことロングの黒髪をなびかせる青年Gabriel Sugrueは、Hype Williamsのライブで圧巻のパフォーマンスを披露する凄腕のドラマーであり、Dean Blunt的に閉じた我が道を行くのかと思いきや、〈1080p〉のような旬のレーベルからポンッとカセットを出してみたり、そうか、君は”アンダーグラウンド”に留まる運命なのだな、と訳のわからないミックステープを聴きながら思っていたところに〈DFA〉からデビューして太い存在になったりと、とにかく掴めないのがGobbyだ。そんな彼と連絡を取るようになったのが、私が昨年Druid Cloakが運営する〈Apothecary Compositions〉からリリースした『Gargoyle』のzipをくれという催促を彼から受けたことがきっかけだった。会話を重ねていく中で両親が日本人と交流があったらしく、日本でのプロモーションをもっとしたいそうで、知り合いのメディアの人間に自分のことを紹介してくれないか、とも。日本でライブをすることが生涯の夢でもあるそうだ。そこで(?)、交流の深化も兼ねて、同郷のtoiret statusを引っ張り出して1曲ほど仕上げたのでここに公開する。どう考えてもクソみたいな曲だが3人は同じようにポップ・ミュージックが好きだ。

7/16/2016

rrr G ~ coco_chambo / great_release



 日常の音。何でもないスマートフォンで撮影された動画。日々大量にYouTubeやTwitter、VINE、Instagram等にアップロードとアーカイブされていく誰かが撮影した無価値の光景。こういう議題、もういいよね。そういえばWIREDは”インターネットの次に来るもの”を論じようとしている。しかしインターネットはインフラだ。生活のそこにある。これからもずっと。自分の足で稼いできたフィールドレコーディングにYouTubeから引き抜いてきたmp3は劣るのだろうか。劣る。と言い切りたいところなのだが、アップロードした当人が音楽として認識していない動画の音声ファイルを音楽としてパッケージする行為は十分すぎるぐらいに芸術の行為だと思う。”Music for YouTube”の音楽は数年前にでも発表されているべき。しかし、今の所それらしい運動はない。そんな悲哀を感じるrrr Gの二つの映像作品。大多数にとってどうしようもないものだ。しかし心地の良さがある。深夜に一人で、部屋を暗くして。YouTubeの関連動画で偶然見つけた、あの動画たち。無価値としていい。無価値なのが良い。実験はオナニーの行為であることが何よりも重要。大衆に響く必要はない。

7/15/2016

SIM MIX: #001 Diego Navarro ~ 'First Children'

Diego Navarro

 スペインはバレンシアのプロデューサーDiego Navarroは1991年生まれの才能溢れる若者だ。バレンシア工科大学が援助した視聴覚表現探査かつローカルの才能にフォーカスしたフェスティバル”ROOHM”の運営メンバーであり、アートや音楽イベントを多数開催するパブRadio City ValenciaではCYTL名義で"CU)LO"なるクラブ・イベントを主催している。〈NAAFI〉や〈Staycore〉といったコレクティヴやレーベルが中心になり作り出している現行のクラブ・シーンを、スペインの地からローカルを大切にしつつ捉えようとしている人物だ。昨年にはThumpにインタビューを受けており、Sentinelなど彼に影響を与えているであろうプロデューサーたちを自身の世界の名刺代わりに収録している。

 彼が提供してくれた「SIM MIX #002」は、SIMが日本のメディアだということを意識してなのか、アニメからのサンプリングだと思われる女性の日本語での会話から始まる。〈NON〉などの”オルタナティヴの主流”を絶妙に外したレフトフィールド色の強い人選でありながら、それらしい音のチョイスにまとめていることでモードに即しつつ亜流の提示をしている。日本からはYoshitaka Hikawaを選択しており、コンタクトを取らずとも帯同する”音感覚”を彼らが共有していることがわかる。



Tracklist:
  1. YDVST - artificial_MIND
  2. sarah wong - Missing in Seasons
  3. WEB://GH0ST - SHARPED RHYTMS FOR EXPLORING YOURSELF (EDIT1)
  4. Y1640 - SPIT INTENT
  5. Morten_HD x Tone Ra - Flex Test
  6. θfash - Yo No Lo Conozco (Bootleg)
  7. Yoshitaka Hikawa - Abyss X Pain remix
  8. SWAN MEAT - WAXXX POEM
  9. umurmurum - infantile loop
  10. Bru - Always Never (Barla Rmx)
  11. kadien - vtb
  12. Dasychira - Sanctuary
  13. H Y Y S X L - HUMAN 2052
  14. ayya ☭ - `•. As Devil Of Eternity To Nothing `•.
  15. Valerie Tricoli - V. As For The Crack
  16. Diego Navarro - ?
  17. Ramin Diawadi - Hodor