3/30/2017

ISHMINTY





90年代生まれとそれ以前の人々は肯定・否定の立場に関わらず両者共に”インターネット”を神聖視しすぎたと言わざるを得ない。私はインフラとしての、ツールとしてのインターネットを愛しているし、それらを享受している人間がインフラとしての”インターネット”と、”internet-ish”のヴィジュアルやサウンドを一括りにして叩いていた状況にはヘドが出るほど嫌悪している。そういった連中とは徹底的に距離を取っているし、逆も然りだろう。しかし、そんな私も、その逆も、先の通りに”神聖視”の過熱の結果だと結論づけるのはそこまで難しい話ではない気がする。こんな論争もここ日本では”旬”が過ぎてしまい、結局、空白のまま静かに横になってしまったようだ。その中で90年代生まれの若者たちがピュアに、時間の体験として大きいそれら”インターネット”を自然に、違和感なく、滑らかに対峙している状況は、ここではEBM(T)を指すが、私は幸福なことだと思っている。野次を気にしている場合ではないのだ。そこに付随して、私たちより更に年下の、そう、「00年代」以降に生を授かった子たちの見る世界というのは、私たちが10年代前半に経験した”めんどくささ”とは無縁の、よりインフラとして目地の浮きのないインターネットがあるのだろうと、少し羨ましく思うのだった。

SIM MIX: #010 Organ Tapes ~ 'Wakeful At Night Looking'


プロデューサーを兼任するMC・Organ Tapesは、Triad God、Palmistry、Bala Club周辺といったオルタナティヴなR&BやUKベースを背景として、ダンスホール、レゲトン、トラップなどを取り込んだスタイルのここ数年の流れに呼応している。特にUK〜上海な活動拠点は独特な東西文化の柔和を生み、となってくるとやはりTriad Godの姿がそこに見える。彼が上海を選んだのは、Tavi周辺のチャイニーズ・ストリート勢の登場ともリンクしており、”東京”でないアジアのメガロポリスが本格的に”アジアの音楽のメッカ”として勢いづいていることの証左である気がしており、こうした事例が”東京”であってほしい身としては羨ましいとしか言いようがない。DJ Pitchが運営するTobago Tracksからの2015年作「World Life」リリースのほか、自身がファウンダーを務めたオンラインZINE・Disc Magazine、その精神性を継承し膨大な量のミックスを日々投下しているJeromeへの音源提供、現行エピック・コラージュ色の強いサブプロジェクトDJ Corpmaneなど活動は幅広く、先日登場したBaby Blueとも重なるが、彼らの行動範囲というのはしっかりとした価値観と美意識が共有されており、”イケてない”奴らというのはコミットしていない、出来ないところに、ファッション畑からの支持を集める理由があるのだなと強く感じる。その後ろに”性”がある音というのはいつの時代も強度があるし。



Tracklist:
  1. Breadwinner’s Apology (Future x Graham Lambkin & Jason Lescalleet x Clipse)
  2. GRACE OMEGA - sentinel
  3. Forever - Julianna Barwick
  4. Rad Brain Years (Captain Blood x Jefre Cantu Ledesma)
  5. Why Do I Look Up To You? - Lake OT LOOP
  6. ??? - ???
  7. St. Olafs Field Recording
  8. Guai Sewers (Kris Wu & Tan Jing x M.E.S.H.)
  9. Junggy’s Decay - Shenggy
  10. Kiss Me - Ed Sheeran OT LOOP
  11. Every February Washed Away (Tay Zonday x 2pac x DJ NATE) OT STORM EDIT

3/28/2017

+you & メトロノリ (teaser) branch tapes 2017


http://tomentosarecords.com/product/you-splashing-branch-tapes/
https://www.youtube.com/watch?v=5Wc06KW4YVA
昨年、台湾での夏の想いでを綴った『splashing』と題した+youのアルバムをカセットでリリースしてくれたtomentosaのレーベル、branch tapesより、メトロノリとの作品を。羽田空港に行くまでの音楽として。

3/22/2017

SIM MIX: #009 Baby Blue ~ 'Love Is Trance'


"we drift deeper and life goes on"

00年代後半から10年代前半にかけて、自身も作家として活発にリリースを重ねたJulia LaDenseがファウンダーを務めるレーベルAfternoons Modeling(ここにWakesleep〜Tanning Salonという線があるのだとすれば、昨年のAirportはBaby Blueから続く線だろう)よりリリースした2014年作のEP「Hair」。これを皮切りにBaby BlueことJulian Briggsは、EP・ミックステープ・シングル・DJ Mixを中心に”自身を安売り”しない目利きである程度の”界隈”を行くような佇まいを見せている。 Cyber Spaからの2015年作DJ Mix「Crippled Angel」はわかりやすくM.E.S.H.やLoticが収録されていたし、昨年はNONなどのレーベルとも同期するPTPより満を持してデビューし、そこでリリースされた「Void Gate」は2016年の佳作として位置付けるべき内容だった。レゲトン、ダンスホール、ガバ、クドゥーロ、グライム、EDM、インダストリアル、R&Bをマッシュアップさせたような感性はまさにTotal Freedomチルドレンとして間違いない。そう言ってしまうと2017年のいま逆張りするのには旬な”その感じ”になるが、国内では彼に対して一層に愛のあるエールを送る原宿のRadd Loungeとその周辺のストリート・カルチャーにおいて、上海やソウルなどの熱気に”東京”が押されてしまっていないか不安な私としては、こういった”いまの感性”をSNSでのシェアではなく、ミクロでもよいから文章に記していくのが重要なのではないかと、今後も”東京”がかっこいい街であってほしい私の羨望の感情も込めて、”この辺”もSIM MIXで取り上げていくことができればと思う。”彼ら”の来日がいつも盛り上がる、そんな街に東京がなってほしいので。



Tracklist:
  1. INTRO (love is trance)
  2. City (unreleased) + Chastic Mess (rivalry) + Push (strange world)
  3. York (quake) + Andy Stott (intermittent) 
  4. Motorcycle (as the rush comes) + Crystalone (serpenstance be fit)+ Bloom (vessel)
  5. Moby(When It's Cold I'd Like To Die) + Eaves (Vascular [x/o tranquility mix])
  6. x/o - where is sense in turmoil + Emil/Sacrifice
  7. Dr. Actor - In the Plague I'm Standing
  8. VIOLENCE - The Third Tiered Candle (Lyric Excerpt)
  9. Cacogen - three sleepless nights 
  10. Chicane (lost you somewhere) + SWAN MEAT (IRON MAIDEN/COLERIDGE X WWWINGS X RIHANNA) + Bauhaus (all we ever wanted was everything) + Perasma (swing2harmony) + Sonique>> Deformer (counter carnage akira remix) + Ivan van dahl (reason) + ATB (9pm till i come)
  11. Sebastian Ruslan + Baby Blue - Feign
  12. ASMR whispers
  13. City - Cold & Bright

3/20/2017

kenji yamamoto ~ fukushima feat. gobby (demo)


3月11日、その日に「3.11を忘れず」だとか、そういった類の言葉をSNSに投稿することを躊躇ってしまい、どうしても出来なかった。私もそろそろいい年なわけだから斜に構えている場合ではないし、「忘れない」ことが大切であることは知っているつもりなのだけれども。そもそも、遠く離れた西日本の田舎で暮らす私にとって、東日本大震災は、叩かれることを覚悟で記すがどこか「他人事」だ。生涯で身の危険を感じる自然災害にも直面をしたことがないし、とにかく”リアリティー”がない。2011年3月11日から経過した6年という時間は私の中の「3.11」が風化していることを否定できないし、ニュースで目にするそのキーワードで、ああ、そんなに経ったんだ、と、思うぐらいで終わってしまっている。興味がないだとか、そういった訳ではない。しかし、義援金を送ることも私は2012年が最後になってしまったし、「3.11」は日々の目の前の生活でいっぱいになってしまっている私の頭のなかでは優先事項が高くないし、それが普通だと思う。名前も知らない人の死は、そばにある愛する人たちのそれらに勝る訳がない。と、くどくどとポエムを書くが、毎年訪れる「3.11」の、故郷や大切な人たちを失った方々の映像を見るという機会は、感じているのは絶対に私だけではないはずなのに同世代の若者達は大して表現しようとしない「言葉にできない閉塞感」のファクターの一つであるのではないかと思う。1991年から2002年とされているこの国の「失われた10年」は誤りであって、正しくは”20年”だったし、順調に”30年”になろうとしている。そんな斜陽のなかで起きた「3.11」は汚い言葉で言うならば”トドメ”だったような気がしていて、そして、立ち直る前に迎える「東京オリンピック」に滲む”最後の花火”の気配はどうしようにも私を不安にさせる。でも、どうしようもない。それをどうにか形にしたい。音楽は社会を反映してきた。私もそういった音楽を作りたい。誰かに届けたいのではなく、”言葉にできない”のだからこそ、音楽としてこの気持ちの悪い感情を嘔吐してしまいたい。



'RPO (Ritual Public Offering)' by NIKKEI (Wasabi Tapes)

'RPO (Ritual Public Offering)' by NIKKEI (Wasabi Tapes)

Wasabi Tapesのnew shitはGordon WantuchによるプロジェクトNIKKEIのデビュー作。経済にまつわるチャートを目にしたとき、それらの背景には末端である私達の日々の生活があるわけだが、どこか自分とは無関係であるように、他人事であるように思える瞬間がある。あまりにも巨大な上層の意向で操作され動いていく折れ線は一般市民の私にどうすることも出来ないし、円安・円高の話もバンドキャンプなどで音源を購入するときに思い浮かべるが、だからと言って、というのが事実だ。NIKKEIはそれら上・下部構造の社会が無機質に刻字していく点と線、数字が織りなすものを眺めているときに流れてくるアンビエンスを捉えている。音の質は温もりのあるものなのに、それを描写するNIKKEIの目はどこまでも冷めているし、資本主義の限界に直面しつつある現代という世界が崩壊していく(かもしれない)未来の姿を目の当たりにしているような感覚を覚える。しかし、こう大袈裟にディストピアを記しながらも本作『RPO』の心地がよいのは、あくまでもNIKKEIは「経済」のアンビエンスを写実的に奏でているだけで、そのチャートの向こう側を触れようとはしない、”エモーショナル”の引き際に抜群の感性が働いているのだと感心している。NIKKEIの第一歩に立ち会えたことを感謝したい。





☆★ dj yes ★☆ new song via Quantum Natives (teaser)



3/15/2017

Guillem Sarriá Verdú ~ STOP NOMOPHOBIA Teaser


1992年生まれ(ちなみに同い年)の作家Guillem Sarriá Verdúは、スペインのバレンシア工科大学にて工業デザインの博士号を取得しており、工業製品の製作を生業としているようだが、昨年よりバンドキャンプが作る現行のシーンを順調に歩んでいるAirportことHunter Pharis Johnson(ちなみに近々某レーベルからデビューするらしい。戦略的とも取れる2016年と今年の活動が実を結ぶわけだ)に映像を提供しているというのが実にキャッチーで、

そんな彼が「STOP NOMOPHOBIA」という作品のティーザーをひっそりと公開している。ノモフォビアという聞きなれない言葉を調べてみるに、携帯電話依存症ということらしく、なるほど、スマートフォンに顔を吸い込まれている度合いでは世界のトップではないかと、あまりにもそれらが日常の風景になってしまった日本人としては分かりやすい映像だ。そんなことを言っている私も気づけば触っているのだし。そして何も知らない電話の相手を録音する行為は2016年の傑作「Disruptive Muzak」とも繋がるようで、現代社会の批評としても考えさせられるし、何より不思議と心地がいい。

3/12/2017

Kenji ~ "Greatest Live Album: Far East Tour 2011" LP via Orange Milk 2017-2018


Kenji ~ "Greatest Live Album: Far East Tour 2011" LP via Orange Milk 2017-2018

3/05/2017

PF ~ `*:. ~ water fairies ~ .:*`



PFの2ndアルバムはPERMLNKよりリリースする。かなり前からあった話だが、ようやく方向性が決まったので。


SIM MIX: #008 Sean Tatol ~ 'Afluíais'




Tracklist:
  1. youtube collage 
  2. L'Monte - In A Heartbeat (unreleased demo)
  3. Toshifumi Hinata - Broken Belief
  4. Correnti Magnetiche - Citazioni
  5. Yannis Vlachopoulos - Morphs II (Forms II)
  6. Horatiu Radulescu - Streichquartett Nr. 4 Op. 33
  7. Gustav Mahler - Das Lied von Der Erde: "Der Abschied" (cond.: Bruno Walter, alto: Kathleen Ferrier)
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関西のアート・ショップ、ナイスショップスーでも寵愛されるサンフランシスコのアーティストSean TatolがSIM MIXシリーズに登場。カタログ番号#008、タイトルは「Afluíais」。DIYマガジン「Your're Magazine」の刊行、詩集「Black Pin」、Elliot Costとのレセプションをまとめた「They Can’t Stop Me, Even If They Stopped Me.」などを日本に少数ながら流通させるナイスショップスーの気概に感謝しつつ。

3/02/2017

Le Makeup ~ Straw


大阪のプロデューサー・Le Makeupが、先日セルフ・リリースした新作ミックステープ「Unaccustomed Earth」に収録された楽曲「Straw」のミュージック・ヴィデオを公開した。拾ってきたのか自身で撮影したのかが曖昧なラインの、いや、スマートフォンで採集したに違いない、いや、やはりこれはYouTubeに転がる無数にあるそれらであるだろう、身の回りの風景をカットアップした映像。デートで訪れた植物園だとか、赤紫に燃える、夜を迎えつつある空だとか、背伸びしない美しい日常を捉えるのがまだ若干の幼さも残る若者で、その彼が音もつくり、映像も添えてと、こうして自身の頭に広がるかっこいいものを表現していくのは端から見ていてやはり良い。