9/24/2016

SIM RADIO: #1 w/ Kenji Yamamoto & La Reprise (OCT 1, 2016)


shintaro matsuo *

TRACKLIST:
  1. NV ~ Binasu
  2. Le Makeup ~ Subcidence
  3. HERBARIUM ~ ШИШКИН ЛЕС
  4. Foodman ~ Otonarabi
  5. Galen ~ ◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉
  6. Y.Ohashi ~ 影の裁縫機
  7. EATQS ~ Symmetry
  8. Vangelis Katsoulis ~ Improvisation (1987)
  9. TAKAO ~TRESS
  10. Yoshitaka Hikawa, Isamu Yorichika, Nozomu Matsumoto and Kenji Yamamoto ~ Untitled
  11. rkss ~ When Make Feel You
  12. James Ferraro ~ Marketphagia

9/20/2016

SIM MIX: #004 Ana Jikia ~ 'lil dunbløt'

Ana Jikia

 ジョージアで生まれ育ち、ドイツに移住した後、現在はノルウェーに活動の拠点を構えるAna Jikiaは25歳のアーティスト。仕事を尋ねるつもりで”毎日何をしているの?”と質問したところ、英語圏の若者が好んで使う”procrastination(グダグダする、後回しにする)”とだけ返ってきた。彼女は肩の力を抜いている。非常に自然体だ。
 彼女のパーソナリティについて掘り下げよう。
  • ”楽しさ”と”誠実さ”のある音楽は全てが好きだけど、強いて言うならばジャングルとドラムンベースがお気に入り。
  • 食べ物、音楽、易しい哲学に興味がある。
  • 自然と新鮮な空気を味わうことが出来る場所なら基本的に大好きだけど、今のお気に入りはやっぱりノルウェー。
  • 将来の目標はリラックスすること。
  • 日本は訪れたことがないのに大好きな場所。でも観光旅行だけで行くのは嫌。どうせなら日本で何かしたい。
 最初に送られてきたミックスは油にまみれた機械が蠢くような硬質さを持たせていたのだが、数日後、彼女から”フレッシュではなくなったから新しい内容にしたい”と要望があり、そして受け取ったのがこのドローンが前半の多くを支配するものだった。静的な広がりに終始するのかと思いきや中盤以降はヒップホップや私とssalivaの「aria」をズタズタにしたリミックス、ハープ、えーと、これは何だろう...。
 そう、色々と彼女は自由に楽しんでいる。最近はSky H1やMalibu、Toxe等の女性プロデューサーの活躍が素晴らしいが、それらのクラブ畑とは距離を取り、どちらかというと3hd festivalが好みそうな実験の肌質。アカデミズムやスノビズムは感じない。ナチュラルにあらゆる音楽をコラージュし、咀嚼し、吐き出している。なにぶん美人なもんで不思議とそれらからは良い匂いがするのだ。美人が噛んだバブルガムのような。いや、別に嗅いだことがあるわけではないぞ。


Tracklist:
  1. Komodo Haunts - Streams Through Thick Air 
  2. avril23 - axoxo 
  3. Stones Throw Podcast-95_ Carlos Niño - Waves, Heavy and Calm 
  4. Carlos Niño & Friends-Calimayan (ft. Nate Morgan & Yaakov Levy) 
  5. waterdragon - huch 
  6. Alizbar (Elizbar) -Sny salamandry Celtic Harp Keltskaya arfa 
  7. Georg Arne - Vielleicht 
  8. Julia Holter-Don't Make Me Over (Dionne Warwick cover) 
  9. ana jikia - ok soul 
  10. Nirvana xylophone-Heart-Shaped Box (mini)

9/18/2016

tk. tomohiro ~ Dreamspace(mixtape)pt.1(rough)


Dear TK. Tomohiro

Kenji Yamamoto ~ JEROME Mixfile #039


 今年に入りBurialのスクリューで遊んでいたのだが特にどこかで公開しようとも思わずにHDDに寝かせていたところ、〈Classical Trax〉が運営する〈JEROME〉からミックス製作の依頼を受け、良い機会なので初めて人様の前に晒した。個人的にかなりハマっていた遊びなだけに何らかの形でパッケージしたかったので、これを契機にEPとして...。Salon & Coughやwavejumperからこのリミックスの音源が欲しいと連絡を受け取り、Sex Magazineのライターからもメールが来るようになり、意外と面白い内容になるのではないかと期待している。

Tracklist:
  1. +you - burial hd
  2. burial - shell of light (+you/screw)
  3. burial - archangel (+you/screw)
  4. +you - +
  5. lace bows - 40 summers left
  6. +you - splashing ii
  7. +you - amayadori
  8. yoshitaka hikawa, isamu yorichika, nozomu matsumoto and kenji yamamoto - ?????
  9. the unfinished swan - unfinished swan
  10. sanford ponder - alanna
  11. akira kosemura - garden


9/14/2016

SIM REPORT: BLACK EMPEROR @ CHIKA-IKKAI 2016-09-09

 独自の視点で音楽方面のみならずアート方面からも熱い支持を集める全国でも唯一無二ともいえるお店「ナイスショップスー」と、「ミネラル」の現スタッフであり、「治安がいい」等のイベントのオーガナイザーとしても注目を集めるSoujが企画した「BLACK EMPEROR」を取材した。

 当ブログ主宰のKenji YamamotoのMIXからスタートした本イベント。パッケージから伺えるようにゲームミュージックの要素が強く感じられながらも合間に入るブギーやアンビエントに+you等のエイリアスの要素が感じられ、独特の空気感のあるMIXになっていた。また、「Black Emperor」の名そのままにプロジェクターから流れるかつての暴走族を記録した映像もイベントの期待感を高めていた。


 その流れでやや緊張の面持ちでライブを始めたLe Makeup。だが、その表情とは裏腹にラップトップから発せられた音は〈NON〉や〈N.A.A.F.I〉に通ずる硬質なグライム。〈Wasabi Tapes〉からリリースされた作品からもそれは伺えたが、クラブでも十二分に存在感を示せるサウンドであり、その音をまだ19~20の青年が奏でていることもまた興味深かった。


 オーガナイザーでもあるSoujがDJをし(t.a.t.uのリミックスをかけたところが個人的にベストパート)、某アーティストの変名であるLADY MONDEGREENがDJ。実際の名義同様の解像度の高い音にメロウなメロディが心地よく、飄々とDJをこなす姿も印象的に映った。


 今回のメインアクトであるSamuelspaniel。彼特有の浮遊感のあるウワモノがここまでの流れと合っており、爆発的な盛り上がりはなかったがじわじわと熱量を上げていく、説得力のある音を鳴らしていた。


 Samuelが終わるとディナミとYASUEのDJ。始発の時間が刻々と迫り、段々人が減っていくなかディナミのはちゃめちゃなDJとマイクを使ったカラオケパフォーマンス、スー含めその辺にいる人を誰彼かまわず巻き込む即興性はカトーマサカー関西篇として行われた「兄貴と嫁」を思い出す、というか、その再来。ディナミの前か後か記憶があやふやなのだが、YASUEがDJに徹しているということもディナミと対称的で良く、Soujとスーと合同で企画したということの強みがこの時間にあった。


 最後はナイスショップスーとSoujのB2Bで〆。Samuelまでのクラブ然とした音とディナミ以降の緩い感じとのコントラストが一般的なクラブイベントには無く独特の間口の広さがあった。またKenji Yamamoto、Le Makeupの音が実際にクラブで聴けたということも一つ重要なポイントだと思う。今後ともナイスショップスー、Souj、それぞれイベントを企画していくと思われるので、チャンスがあれば是非この独特の雰囲気を直接感じとっていただきたい。最後にイベントの取材を快く引き受けてくださったナイスショップスー、Soujにこの場を借りて感謝の言葉を述べたい。


9/12/2016

Cheseball _ ~ M Y S T


 数万人を収容するアメリカン・フットボール・スタジアムが沈んでいく霧の海を遊泳するCheseball _は、ゆったりとした動きから非常に潜水の時間を長くとり、この手のジャンルの様式美を見事に抑え、深淵なる白の世界を創り出している。現実と夢幻の間に敷かれた境界線が蜃気楼のように揺らいで溶けていき、全身を冷んやりとした空気が包むと、水蒸気と電子の粒が螺旋を描きながら波を打つのが遠くにも近くにも見える。海なのか、雲なのか。それとも電脳の世界なのか。
 Cheseball _の事は以前から彼・彼女のチャンネルに登録していることもありゆったりと追っていたが(私の楽曲も扱ってくれている)、彼・彼女の審美眼によって淡々とアップロードされていく他者の音楽と自身の対比のさせ方が抜群に良く、これを一向にまとめて作品としてパッケージする気配の無いのもYouTubeにてのみ観測できる表現で非常に愛しくなる。世界の数十人程度が観客であることを腐ったアンダーグラウンドと切り捨てるのか、特別なものとするのか、私はやはり後者でありたい。


$ega & the rainbow streets ~ 口づけ (the kiss) (demo)


sampler1: $ega & djwwww
sampler2: tk. tomohiro
glockenspiel: doo ing
flute: risa g
guitar: crystal
vocal: hana chou chou
chorus: pure j.j.
mastering by kenji y.
recording at gravity studio ©
2016.08.18

9/11/2016

Azuma Makoto ~ Drop Time







○ Azuma Makoto http://azumamakoto.com

rrr G ~ po vecheram / shitty poet ~ shitty day


 バンドというフォーマットがティーンの中で太いものでなくなり始めたここ数年の時流において(今はヒップホップが全てを握っている)、逆張りするつもりではないが、そこでどうするのかということに非常に興味が湧いている自分としては、この文字通りにゴミみたいなヴィデオ、ゴミを映したヴィデオに流れる00年代のインディー・マスロック・バンドがEPに収録していそうなリフ、サンプリングなのかどうか知らないが、これが非常に心地が良い。
 以前も取り上げたがrrr Gは”YouTubeトラッシュ”の美学を心得ている人物だ。先日、Gobbyから新しい動画を公開したとの連絡を受け取った。こちらも本当に”クソ”みたいな内容で。名門〈DFA〉からデビューした彼がその後にこう言った相変わらずの悪趣味を投下し続けるのはある種のタフネスというか底抜けにポップ・ミュージックのジャンクな部分や複雑化を楽しんでいることが伺えて、やはりフランク・ザッパの政治的アティチュードを抜きにしたところの正当後継者は彼で間違い無いのではないだろうかと。彼は確かにYouTubeトラッシュのセンスを持ち合わせているが、70年代や80年代から続く実験音楽の紡ぎを美しく受け継いでいるのが素晴らしい。rrr Gも似たところに立つだろうか。

https://soundcloud.com/gobby-2/the-cashier

9/07/2016

BLACK EMPEROR @ CHIKA-IKKAI 2016-09-09


DESIGN & MUSIC BY @EXILEVEVO

BLACK EMPEROR
2016.09.09(FRI)
OPEN/START 23:00
ADV/DOOR ¥2,000 + 1DRINK
AT CHIKA-IKKAI

SAMUELSPANIEL (FROM BE)
LE MAKEUP
SOUJ
YASUE
DINAMI SHAISUKE
LADY MONDEGREEN

BGM: "KENJI YAMAMOTO ~ MIX FOR BLACK EMPEROR 2016-09-09"

9/06/2016

$ega & the rainbow streets ~ ナイト・クルージング(night cruising)


sampler1: $ega
sampler2: tk. tomohiro
dj: djwwww
bass: doo ing
drum: risa g
piano: crystal
vocal: hana chou chou & pure j.j.
mastering by kenji y.
recording at gravity studio ©
2016.08.18

$ega & the rainbow streets ~ 江ノ島(enoshima), 夕景(evening view)


sampler1: $ega
sampler2: tk. tomohiro
dj: doo ing & djwwww
drum: risa g
guitar: crystal
vocal: hana chou chou
chorus: pure j.j.
mastering by kenji y.
recording at gravity studio ©
2016.08.18

9/04/2016

JZ ~ revive


 GIFに見るミニマルをヴィデオ・ゲームに持ち込もうとしているCarl Burtonの活動を追うことを決めた今、こういうゴミみたいな映像にもフェティシズムはあるのだなと再認識している。

概ねたか in "絵zra" #002 「2013年11月03日20時03分18秒」

'2013年11月03日20時03分18秒' (2013) by 概ねたか

#001


9/02/2016

Carl Burton ~ ISLANDS Trailer


 今年を振り返った時にそこにあるのは『INSIDE』で間違いない。それほどにあの作品には衝撃を受けたのだが、もしかしたらこの『ISLANDS』も2016年の事象の一つとして数えることが出来るかもしれない。私は『INSIDE』による”空間の広げ方”にエドワード・ホッパーが描く”孤独”を見た。そしてデジタル・アーティストでありアニメーター、GIFクリエイターのCurl Burtonによるそれらにも、人工物と環境音が作り出す”無”が共通してある。彼は自然や建築、ありふれた日常やニュースにインスピレーションを覚えており、その延長線上にギリギリに佇むのは、サイエンス・フィクションとシュールレアリズムが溶け合った世界だ。この世の理を少しだけ逸脱した構造物の挙動がループしていく様は不気味なはずなのにどこか心地が良い。しかし寂しい気持ちにもなってくる。思えば私が現時点で類似性を見出している『INSIDE』でも、死が近いながらにどこか美しさのようなものを感じ取っていた。果たしてCurl Burtonは『ISLANDS』でその境地に達するか。

○ Curl Burton http://carlburton.io

9/01/2016

SIM LETTER from NICE SHOP SU: Various Artists ~ Very Gois #02


 オンライン以降、無限といってもいいほどたくさんの表現があふれていて、それを追うことだけでかなり疲れるし、その中から自分が本当に好きなものを見つけることは困難で果てしない。自分たちの知らないこと・わからないものごとがあまりにも多すぎる。  だけど、インターネットのいいところは国境を超えて気軽に世界中の人たちとメッセージを送りあえるところだと思うし、(この記事を読んでいる多くの方はきっとそれに気づいていると思うのですが、)海外の人たちにはその感覚が浸透していて、たとえば私たちがすごいと思った方たちに「Your works is very nice! I'd love to know more about you<3 and I want to make a compilation album. if possible, Please do join you :) 」みたいなGoogle翻訳を使った簡易なメッセージを送ってみたらほとんどの方から新しい楽曲を快く提供いただけたし、こうやって作品としてまとめることもできました。 あと、なぜか知らない方からメッセージがたくさん届くようにもなって、これはあの人の別名義なのかとか、この人とこの人は友達でこの人と知り合いでという具合にとにかくどんどん繋がる。  それでもそれはほんの一部でしかなくて、網羅なんて到底できないほどの創作物が存在していて、似たテイストのものごとをまとめて名前を付けたり、既存の価値観に当てはめたり、日々更新されていく。


 もちろんいつの時代にも未知なる美しい物事はたくさんあったんだろうけど、これほどまでにアーティストや自称アーティスト、そうとも名乗らず個々が自由に創作を発表できる時代はなかったはず。 その中から何が優れているかを自分だけで判断するのはとても難しい。だけど、確実に自分たちが感動する美しい物事はたくさんあって、その基準を言葉にするのは難しいけど、なんとなく感じるのは自分が今までに聞いたこと・見たことがあるかどうかな気がしていている。知らないものを知りたい。その人にしかできないオリジナルな表現に一番感動する気がする。  そんな興味だけを(といってももちろんその界隈では注目されているアーティストの作品も多く収録しているのですが)詰め込んだマイクロSDカード型コンピレーションアルバムがVery Gois #02です。 2016年7月10日に発売を開始し、8月末より全国流通をスタートすることになりましたこのタイミングでSIM様にセルフレビューを掲載いただけることになりました。  といっても結局何が収録されているかまともに説明できていないお粗末な文章なのですが、きっと何か始めたら絶対楽しいって確信できると思います。 Tracklist:
1. Live Set Preview - XYZ
2. floss (dr. dre is an idiot) - b o y m o o n
3. sink - H TAKAHASHI
4. yma0203 - yea
5. 2500 Spite House - Sean Seaton
6. Field Scan - Matthew P. Hopkins
7. nakahechi - standard grey
8. minuet du - G.S. Sultan
9. 009 - xPhone tweeted hatena
10. rib teacher - /f
11. 0704 - network glass
12. Untitled track - Eric Frye
13. Cam Ranh - Christian Mirande
14. seaclet track - no artists

Kenji Yamamoto ~ tokyo olympic 1


 先日閉幕したリオ五輪の閉会式の映像をYouTubeで見て、攻殻機動隊で流れていそうな「君が代」を耳にした時、これはいつもの癖なのだが、私は即URLをコピーしmp3を引き抜くサイトに飛んだ。

 サンプリングの魅力を深く知ったのは中学か高校の頃に出会ったThe Avalanchesの『 Since I Left You』だったが、実際にコラージュ・ミュージシャンとして創作をするにあたって特に影響を受けたのがJohn Oswaldの諸作とOPNの『Replica』だった。私の中にはこの三者から受け継ぐものが永遠にあることだろう。私は彼らのハイブリッドになりたいという強い気持ちがある。その自覚が芽生えた時から、YouTubeで何かを観ている時、気になった素材があればmp3を引き抜くというのはルーティーンのようになっていたし、この積み重ねによって構築されていくアーカイヴは、私にとっては創作のエネルギーの結晶であり、このHDDこそがアートだと信じて疑わない。
 さて、そんなルーティーンの一部分でしかなかったリオ五輪閉会式の「君が代」だが、マリオなどを動員してのパフォーマンスは素直に楽しめたし、2020年に東京にて開催されるオリンピックに対して期待が膨らんだのは間違いないのだが、最後の花火と揶揄される東京オリンピックというより、その後の日本に抱くなんとも言えない不安が拭えることはない。しかし、どうかしようにもどうかできるわけではない。
 私は現在、建築の仕事をしているのだが、残業はごく当たり前のことで珍しいことではないし、土曜日働くことだって普通にある。大変ではあるが投げ出したいわけではない。恋人と会える時間は少ないが、将来を約束している相手であり、互いに信頼している。疲れた身体を夜の団地に運び、それをソファに沈めて起動させたMacBookの向こうには私の癒しが待っている。コンビニで買ってきたスーパーカップを食べながら読むDirty DirtやKill Screen、Tiny Mix Tapes、Sex Magazineなどはいつも楽しい。恋人と電話をしながら過ごす夜の方が多いが。スカイプの時もある。時計の針は進んでいき午前12時。明日も早い。寝よう。日曜日まであと何日だっけ。こうして何も変わらない日常が過ぎていく。
 日本の暗い未来を私にはどうすることも出来ない。しかし毎日が楽しくないわけではない。むしろ笑顔の方が割合として多いのではないか。”絶望”なんて感情は一切ない。そこまで派手に悩んでいない。はずなんだけれども。
 Nozomu Matsumotoが先日〈Roof Garden〉より「Pre-Olympic」と題したシングルを発表した。オリンピックの為に用意された国内最高峰のオーケストラの間を閃光する飛行体が飛び交うような近未来のパフォーミングを目の前にした。アーキグラムからの流れとして私も敬愛するザハがデザインした、幻となった国立競技場に響くに相応しい音だ。実現しそうでしなかった、ifの未来。失われた20年の過去、そして失われていく未来ではない、日本にあって欲しかった音楽。

 この国の人口が減っている現実は地方都市においてより肌で感じることの出来るものである。私の地元は人口10万程度の、本当に、本当に何も無い街なのだが、私が通っていた頃は学年40人程度で2クラスに分けていた(それでも都会と比べると圧倒的に少ないのだが)小学校・中学校は、気づかないうちに1クラスに縮小され、教室が余っているそうだ。子供が年々減っており、それは止まりそうにない。2020年を迎える時は大丈夫かもしれない。しかし、2030年、私が幼少期を過ごした母校は消えているだろう。ここ数年、よく田舎の文化のインフラとしてブックオフなどが挙げられる。そこで出会った音楽との...。しかし、私の地元はブックオフが潰れた。どんどんと街が乾いてきている。主要駅周辺も夜は不気味なほどに静まりかえる。そんな田舎にそろそろ60歳を迎える両親を置いて出て行く。都会には人がいるし、「文化」があるから、楽しいし。2030年、2040年、2050年。私の地元は死んでいるだろうけれど、「東京」はなんとかなるんじゃないか。「日本」は終っていくけれど。
 こんな風に書いておきながら明日も仕事だ。別にこんなことで不安で押し潰されそうになっているわけじゃない。また変わらない日常を過ごすだけ。でも。2020年について、東京オリンピックについて、考えたい。そしてそれをどう表現すれば良いのか、悩みたい。この言葉に出来ない不安は何なんだろう、と。